不動産コラム

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②契約不適合の事例

本ブログを閲覧頂き有難うございます!

株式会社クレザックの矢吹(やぶき)です!

本日第7回のテーマは「契約不適合の事例」についてです。

前回契約不適合責任について書かせていただきましたが、ピンとこない方も多いかと思います。

なので今回は実際にあった事例をもとに書かせていただきます。

瑕疵物件を大きくわけると、心理的瑕疵、物理的瑕疵、環境的瑕疵、法律的瑕疵の4つにわかれます。

4つの瑕疵の例をご紹介していきます。

 

・物理的瑕疵の例

 

1.付帯設備の故障

中古マンションや戸建のトラブルで多いのが付帯設備の故障です。

給湯器のお湯が出ない、水漏れ、ガスコンロの火が着かないといったケースがあります。

対象になる付帯設備は契約時の設備憑依書かれているもので、

給湯器、キッチン、浴室、トイレ、洗面台、洗濯版、床暖房、インターフォンなどがあり、

エアコンや電気も設備とする場合は売主の責任の対象となります。

 

2.シロアリの被害

中古戸建の場合は、床下のシロアリ被害も多くあるトラブルのひとつです。

シロアリは、住宅の木材に巣を作るので柱などの主要構造に影響を与えます。

シロアリが発見された場合は、シロアリの駆除、ひどい場合は柱の補修工事などリフォームをしないといけないケースもあります。

 

3.給水管の故障による水漏れ

中古マンションや中古住宅で多いのが給水管の故障による水漏れです。

特に築年数が経っている物件は、配管の腐食が進んでいることが多く水漏れをしている可能性が高いので注意する必要があります。

水漏れが見つかった場合、売主は水漏れの補修をしないといけません。

マンションの場合は、対象となる給水管は宅内配管のみで、主管に関してはマンションの共用部になります。

 

4.雨漏り

雨漏りは、中古住宅でかなり多いトラブルです。

屋根や天井裏の損傷や壁などのすき間のコーキングの傷み、増築工事の継ぎ目の不備などによって水漏れは発生します。

水漏れが発見された場合、売主は水漏れ改修工事を行う必要があります。

 

5.土壌汚染、埋設物が見つかる

土地に関するトラブルで多いのが、土壌汚染や埋設物が見つかるケースです。

土壌汚染の場合は、汚染されている土を取り除き、更に土を入れる必要があります。

埋設物の場合は、瓦や畳などのゴミから基礎杭や井戸など対応が難しいものまで様々です。

作業が大がかりになり、他のトラブルと比べると多額の費用が掛かるので特に気を付けたいトラブルと言えます。

 

6.土地の広さが違う

土地のトラブルでも大きな問題になるのが契約内容と土地の広さが違うケースです。

通常は土地の売却にあたっては測量士に測量をしてもらいますが、契約によっては測量しないケースもあります。

そのため、「実はもう一筆あった」、「実際に測量すると登記簿面積と大幅に違う」といった問題が起こることがあります。

その場合はもう一筆の土地を提供する、差額分のお金を返金するなどの対応が必要になり、買主へのマイナスが大きい場合は

契約の解除や損害賠償をされるなど、おおごとになってしまう可能性が高くなります。

 

・心理的瑕疵の例

 

1.物件に人の死が関わっている

いわゆる事故物件です。 建物に物理的瑕疵がなかったとしても、 室内で殺人、自殺、孤独死などがあって心理的に抵抗があるは

心理的瑕疵物件となります。また部屋の中、建物内、敷地内、敷地周辺などどこまでの範囲で起きた事件が心理的瑕疵物件となるかは

これも受け手側次第となります。

事故があった場合に入居検討者にそれを伝える告知事項でも不動産屋がどこまでを告知事項とするかに明確な基準はなく、

後から「最初から知っていればここに住まなかったのに!」などトラブルの要因にもなっています。

 

2.嫌悪施設が近隣にある

嫌悪施設とは、火葬場や墓地、刑務所、暴力団事務所、宗教施設など直接影響はないがあまり周囲にあってほしくない建物を指します。

またそのような公的施設だけでなくゴミ屋敷や度を超えたペットの多頭飼いをしているなど人為的に嫌悪の対象となったものも

これに当てはまることがあります。

 

・環境的瑕疵の例

1.近隣に高層マンションが建築されることになり、日々の日照や通風、眺望が阻害されることとなったケース

2.線路や道路に面していて、騒音や異臭、振動などに悩まされるケース

 

心理的瑕疵と同じく、第三者には悪影響の程度を判別しづらいので、「通常の一般人にとって住み心地がよくないと感じるかどうか」

という抽象的な基準で、環境的瑕疵のある物件であるか否か、判断することになるでしょう。

なお、物件の瑕疵を告知する際、「環境的瑕疵」や「心理的瑕疵」など瑕疵の分類まで書く必要はありませんが、

買主や借主がその物件に住んでみてはじめて、周囲の環境に住みづらい状況があることを把握する場合もあります。

 

・法律的瑕疵の例

1.建ぺい率や容積率が建築基準法の基準を満たしていない

2.接道義務が守られておらず、再建築が不可な物件

3.開発行為が認められていない市街化調整区域内の物件

4.消防法に基づく消火設備の設置基準を満たしていない

 

法的瑕疵物件とは、法令等によって自由な利用が阻害されていたり、法令に違反していたりする物件を指します。

主に、「建築基準法」「都市計画法」「消防法」の3つの何かしらの規制がかかってしまい、違法な物件となってしまします。

 

 

実際の裁判例

裁判例① 10年以上前の自殺は心理的瑕疵にあたるのか?

購入した建物内で過去に自殺があったとしても、自殺から10年以上経過していれば心理的瑕疵には該当しないのでしょうか。

以下では、東京地裁平成29年5月25日判決を紹介します。

 

(1)事案の概要

買主Aは、土地および建物を売主Bから代金800万円、手付金50万円で購入しました。

本件建物には、かつてCが居住していましたが、10年以上前に本件建物内で首つり自殺をしています。

Bは、本件建物内で自殺があったことを知っていたにもかかわらず、Aにそのことを告げていませんでした。

Aは、本件土地および建物の購入後に、建物内で自殺があったことを知り、瑕疵担保責任に基づいて契約の解除を行い、

違約金の支払いおよび手付金の返還を求めて、訴えを提起しました。

 

(2)裁判所の判断

裁判所は、目的物に物理的な欠陥がある場合だけでなく、嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥がある場合も

瑕疵担保責任の対象に含まれると判断しました。

そして、本件建物では、10年以上前に発生した自殺ではあるものの、以下の理由から時間の経過によって

瑕疵が払しょくされるわけではないと判断し、Aの請求を認めました。

・自殺という極めて重大の歴史的背景に起因するものであること
・本件土地建物の立地が古くから居住する高齢者が多く、閉鎖的であること
・Aが本件自殺を知った経緯
・近隣住民も自殺の記憶を払しょくできていないこと
・本件建物が自殺後も建て替えられていないこと

 

(3)解説

売買の目的物に自殺や殺人など、そこで生活することについて、心理的嫌悪感を生じさせる過去の事件や事故は、心理的な欠陥として、

目的物の瑕疵にあたります。買主は、このような心理的な欠陥があることを知らずに、目的物の引渡しを受け、

それにより契約目的を達成することができない場合には、契約解除が可能となります。

 

 

裁判例②売主業者が雨漏り履歴を故意に隠蔽したことは説明義務違反にあたるとして、慰謝料の支払いが命じられた事例

雨漏り歴を故意に隠ぺいしたとして慰謝料の支払いが命じられた、東京地裁令和2年2月26日の判決を紹介します。

 

(1)事案の概要

売主業者Y1(被告)は、平成27年4月、中古マンションの一室を訴外Aから購入し、

同年8月、媒介業者Y2(被告)の媒介により買主X(原告・個人)に1200万円で売却した。

AがY1に提出した物件状況報告書には「雨漏りがあったが修理済み」の旨が記載されていたが、

Y1はXに提出した物件状況報告書において

「雨漏りを発見していない」「漏水等の被害無し」「専有部分の修繕歴無し」と記載した。

平成27年10月、リビング天井から雨漏りが発生し、桶で水を受けるほどになった。

その後の調査で、雨漏りの原因は、上階との間の共用部分にあることが判明し、

その補修費用23万円余を管理組合が負担するとの対応方針が示されたが、Xはこれを拒否し、

Y1に対して、売買契約の錯誤無効などを理由とする不当利得返還請求及び損害賠償を、

Y2に対して、説明義務違反の夜損害賠償を、両者に連携して1437万円の支払いを求める訴訟を提起した。

 

(2)裁判所の判断

本件雨漏りは、23万円程度の費用で修繕可能な軽微なもので、しかも管理組合がその費用を負担する意向を示しており、

本件錯誤がなかったならば、Xのみならず通常人であっても契約しなかったと認められるほどに

客観的に重要な錯誤であったと言えない。本件雨漏り歴自体は生活に直ちに影響を及ぼすものではない上、

契約締結に至る経過においても、重大視され又は契約の前提とされて

いたことは窺えず、これを理由に本件売買契約は解除できないが、Y1は雨漏り歴を知りながら故意に隠ぺいしたので、

精神的苦痛に対する慰謝料40万円を相当と認める。

 

(3)解説

本事案は、修繕可能な軽微なものであり、売買契約の取り消しや無効の主張は棄却されたが、売主業者が雨漏り履歴を知りながら

故意に隠ぺいしたことは信義誠実の原則に著しく反するとして、買主の慰謝料請求が一部容認された事案でした。

告知事項あるいは説明義務に係る教訓として実務上注意しておきたい。

 

 

トラブルを起こさないようにするには

1.知っていることは全て伝える。

2.物件状況報告書(告知書)を正確に作成する。

3.信頼できる不動産会社に依頼する。

 

 

まとめ

今回は契約不適合の事例として、実際にあった裁判例などをもとに書いてみましたがいかがでしたでしょうか。

不動産売買では、小さいことで大きなトラブルに発展する可能性が非常に高いことが分かったかと思います。

自身が、売主、買主になった際にトラブルにならないよう今回のコラムを思い出していただけると幸いでございます。

 

株式会社クレザック 矢吹 稜茉